ゲノム編集の応用例と可能性をわかりやすく解説します

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ゲノム編集という言葉をご存知でしょうか?遺伝子を狙い通りに操作するゲノム編集という新技術が現在広まっています。名前はよく聞きますがいったいゲノム編集でどんなことができるのでしょうか?わかりやすくまとめてみました。

 

そもそも、ゲノムとは何なのでしょう?

ゲノムとは、ある生物が持つすべての遺伝子情報のことです。その実態は、細胞の核の中にある化学物質のDNAです。「デオキシリボ核酸」という名前で理科の授業で学習したかと思います。塩基のペアが2本鎖のように連なり、その並び方が遺伝情報となっています。

そのうち、体を作るたんぱく質のもとになる部分を遺伝子と呼びます。ヒト(人間)では、おおよそ30億もの塩基対の中に、約2万2千の遺伝子があると言われています。

 

 

ゲノム編集ってどのような技術なのでしょうか?

遺伝子を狙い通りに操作する技術です。例えば、特定の遺伝子を壊して働かなくさせたり、遺伝子の一部を入れ替えたり、また別の遺伝子を組み込んだりする技術です。

 

ゲノム編集はどんな方法で行うのでしょうか?

DNAの膨大な塩基配列の中から、目的とした遺伝子を探し出します。そして、DNAを切断する人工物質を道具として用います。そこに挿入する遺伝子を含む場合もあります。名前は難しいのですが、クリスパー・キャスナインという人工物質が有名で、(CRISPR Cas9)取り扱いが非常に容易でよく使用されるとのことです。

ゲノム編集の応用例は?

ゲノム編集を何に使うのでしょうか?例えば、養殖の魚の収穫量を上げたり、食べる身がたくさんある魚や、やわらかく肉質の良い牛など、農産物、畜産物、水産物を短期間に品種改良することができます。また、漁獲時に暴れることで有名なマグロを、おとなしい性質にする開発計画もあるそうです。

海外では、病気の原因となるデング熱やジカ熱を伝える蚊が増えないようにする応用方法も研究されています。

 

 

人間にもゲノム編集が使えるのでしょうか?

はい。人間にも応用が可能です。しかし、ヒトの遺伝子を操作するなどとは、倫理的に議論がなされています。ですが、医学的な観点から見れば、病気の原因となる遺伝子を操作すれば、今まで治療が難しいといわれた病気の治療ができると期待されています。

アメリカでは、エイズウィルス(HIV)感染者の血液細胞にゲノム編集を実施し、HIVを減らす研究も進んでいます。

 

 

ゲノム編集食品と遺伝子組み換え食品との違いはあるのですか?

遺伝子組み換え食品を例にします。遺伝子組み換えの場合は、微生物などの遺伝子をゲノム編集とは別の技術で動植物に組み込み作られています。ゲノム編集の場合は、微生物の遺伝子を組み込むことも可能ですが、動植物が本来持っている遺伝子の一部を狙い通りに壊して働かなくさせることも可能です。

 

ゲノム編集食品の販売審査はどうなっていますか?

外部の遺伝子を組み込んだ場合は、人に有利な作用を起こすかもしれないので販売する際には国の厳格な審査基準を受ける必要があります。

しかし、遺伝子を壊したタイプについては、厚生労働省は自然の中でも起こりうる変化だとして審査を求めないことにしています。(2019年現在)今、販売を目指しているゲノム編集食品の大半は審査の必要のない遺伝を壊すタイプとなります。

 

ゲノム編集食品の審査や届出はどうなっていますか?

届け出をせずに販売したことが分かった場合、名前が公表されることになっています。(2019年)しかしながら、罰則があるわけではありません。消費者庁は販売時にゲノム編集食品との表示を求める方針のようですが、検査自体が難しいという理由から義務づけしないとの決定を行いました。

消費者のためにも明示は必要かと思います、

 

 

ゲノム編集の課題は?

技術的に完璧ではありません。狙いの遺伝子とは異なる遺伝子を改変してしまうなどの恐れがあります。
もし、人間の受精卵で遺伝子操作を行った場合、目の色や背の高さなどを変えることができ、それは子孫まで受け継がれる可能性すらあるのです。

このゲノム編集を人間に応用するにあたっては、世界中で広く議論する必要があると考えます。また、悪用されないよう法律での規制も必要かと思います。